* another sky *
「言わないでほしいの。
ねっ、お願い。」
こんなこと、言いたくない。
自分が何をしているのか、嫌になる。
ここまでして、私は玲を陥れたいの…?
情けなくて、悔しくて、溢れ出しそうな涙を、必死に堪える。
―――はぁ…。
耳もとで、大きなため息が聞こえた。
「…麻友理。
お願いって、私もう誰とも連絡取ってないよ。
千尋さんとも今日、偶然会っただけだし。」
「そうなんだ。
…でもこれからは、わかんないじゃない?
私たちがカナダに行っちゃったら、連絡取ったりするかもしれないでしょう?
だから、一応。
ちゃんと言っておかなきゃって思ったから。
ねっ?」
何、言ってんの。
何、言ってんのよっ、私…。
「いい加減にしてよ。
もう、2年だよ。私は前に進んでいるの。
これ以上、関わりたくないし、思い出したくもないの。
…本当はね、麻友理の声なんて、
聞きたくもないのっ。」
「……っ!!」
当然、だよね、――――――。
私、酷いよね。
自分がこんな人間だったなんて。
「もう二度と、連絡してこないで。」
「…そう。そうよね。
わかったわ。
忙しそうなのに、ごめんなさいね。
私、玲の気持ちも考えないで…。
マリッジブルーなのかしらね。」
「もう、切るから。」
「忙しいのに、ごめんね。」