* another sky *
大きな溜め息を、ひとつ吐いて。
握りしめた携帯の、履歴を開く。
「もしもし?」
「航太。」
「どうしたの、こんな時間に。」
航太は優しい。
自分が忙しいからって、突き放したりはしないから。
「会いたくなっちゃって。」
「えっ?」
「今からそっちに行ってもいい?」
「あ、…。明日早いから、あんまり一緒にいれないよ?」
「そっかぁ。」
拗ねたような声を出す私に、フッと、声が緩む。
「週末、一緒に過ごせるように、時間を取るよ。」
「ほんとっ?」
「ああ。だから今日はもう、休みな?」
「わかった。
美味しいもの、作るからね。」
「そうだ。今日、千尋さんと一緒だったんだろう?」
―――――――!!
「うん。いろいろとお買い物。」
ばれてないよね?
千尋さん、話してないよね……?
航太、―――――。
離れられない……。
航太だけは、絶対に、譲れない。
「じゃあ、もう寝るね。」
「あ、うん。おやすみ。」
後ろめたい思いに、慌てて話を切り上げた。
絶対に、玲に会ったこと、言えない。
航太はまだ、玲を引きずっていると、思うから。
2年もかけて、私が大切に育んできたものを、壊されたくはない。
航太、――――――。
愛してる。