* another sky *

「ショーで滑る、エキシビなんだ。」


「へえ。」


「濃いと思う?」


「濃い……?」


不思議そうな顔をする私に、くしゃくしゃっと笑って見せる。


「現役の時はそう思わなかったけど、今の俺じゃタンゴは濃いよなぁ。」


「そういうものなの?」


「一応、俺、王子様系だからね。」


「なに、それ。」


クスクスと笑う私の頭に、ポンと手のひらを乗せて、

「玲は知らないだろうけど、俺の王子プロは人気なんだぞ。」

と、とっても上から目線で私を見下ろした。


「見たい。王子様。」


「よし。ちょっとだけなら、見せてあげよう。」


すーっと後退し、デッキに近付き、操作する。

クラッシックの綺麗なピアノの旋律が流れてきて、翼の腕がふわーっと広がった。


何なんだろう……。

翼は男なのに、どうしてこんなにも美しい動きが出来るんだろう。

指先まで行き届いた、優雅で品のある情感に、もう、溜め息しか出てこなくて。


「すごーい…。」


「でしょ?」


得意満面な笑顔で、私のもとへ滑り寄る翼に、思わず拍手をする。


「王子様っぽかった。」


「ぽい、はいらない、ぽいは。
まだ、見てく?」


「うん。
邪魔しないように、上にいる。」
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