* another sky *
「翼くんっ。」
…タスク?
「ごめんね、遅くなって。」
名前を呼ばれた彼は、動きを止める。
一瞬、戸惑ったような表情を見せて、走ってくる女の人を見て、また、私に視線を向けた。
その女性も首からカメラを提げている。
「あ、他の取材、オシテル?」
彼女も私の方を見ながら、彼に声をかける。
――――――!!
状況を理解したのか、彼が慌てて私の方へ駆け寄って来た。
その姿に、私も何となく状況が読めた。
「すみません、失礼しました。
取材の方じゃ、なかったんですね。」
「あ、えーと…。」
「すみません。取材の方と間違えてしまって…。
本当に、失礼しました。」
とても丁寧な仕草に、思わず目を奪われた。
「翼君のファンの方?」
――――――!!
「ふぁ、ファン…?
あ、違います、違いますっ。」
訝しげに私を見るその女性に、私は慌てて訂正する。
「いや、あの。
仕事で公園の写真を撮っているんです。」
「写真…?」
その視線が何となく嫌な感じで、私は名刺と社員証を鞄から取り出して、見せる。
「あら…。
じゃあ翼君、私と間違えたの?」
ちょっと媚を売るような笑いで、女の人は彼を見入る。
「そうみたいです。
ほんと、すみませんでした。」
もう一度、頭を下げると、彼はまたトレーニングへと戻って行った。