* another sky *

「翼くんっ。」


…タスク?


「ごめんね、遅くなって。」


名前を呼ばれた彼は、動きを止める。

一瞬、戸惑ったような表情を見せて、走ってくる女の人を見て、また、私に視線を向けた。


その女性も首からカメラを提げている。


「あ、他の取材、オシテル?」


彼女も私の方を見ながら、彼に声をかける。


――――――!!


状況を理解したのか、彼が慌てて私の方へ駆け寄って来た。

その姿に、私も何となく状況が読めた。


「すみません、失礼しました。
取材の方じゃ、なかったんですね。」


「あ、えーと…。」


「すみません。取材の方と間違えてしまって…。
本当に、失礼しました。」


とても丁寧な仕草に、思わず目を奪われた。


「翼君のファンの方?」


――――――!!


「ふぁ、ファン…?
あ、違います、違いますっ。」


訝しげに私を見るその女性に、私は慌てて訂正する。


「いや、あの。
仕事で公園の写真を撮っているんです。」


「写真…?」


その視線が何となく嫌な感じで、私は名刺と社員証を鞄から取り出して、見せる。


「あら…。
じゃあ翼君、私と間違えたの?」


ちょっと媚を売るような笑いで、女の人は彼を見入る。


「そうみたいです。
ほんと、すみませんでした。」


もう一度、頭を下げると、彼はまたトレーニングへと戻って行った。
< 259 / 769 >

この作品をシェア

pagetop