* another sky *

麻友理…。

落ち着くまで待ってるよ。

麻友理が話し出すまで待ってるから。

ゆっくりでいいよ。


心の中でそう思いながら、麻友理の手を私は握っていた。


「ごめんね…。」


「…っ、もう、謝んなくていいからっ。」


ゆっくりで、いいから。

話せるようになってからで、いいから。

そんな気持ちが伝わればいいなと、私は麻友理の背中を摩り続けた。


どれくらいそうしてたんだろう。


麻友理は大きく息を吐き、私の顔を見ると弱々しく笑った。


「……っ。」


こんな時にでも笑おうとするなんて…。


「…なにー。もう…。」


胸に熱いものがグッと込み上げてきて…。

麻友理の手を、ぎゅっと強く握りしめたんだ。


刹那、―――――。


麻友理の大きな瞳からは、涙がボロボロと溢れ出す――。


「………。」


麻友理……。

何が、あったの…?


思わず、麻友理の身体を引き寄せて、抱きしめていた。


「――っ。ふぇぇん。ぇ…っ。」


とうとう堰を切ったように声を上げて、麻友理は泣き出してしまった。


麻友理……。

必死で耐えてたんだね…。


私は、人がこんなにも悲しむ様を、初めて間近で見たと思う。


何も言えなかった。

見ているだけしか、出来なかった。
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