* another sky *
「彼のこと、知ってる?」
「あ、いえ…。」
「知らないの?
ウエハラタスク君といって、フィギュアスケートの選手なのよ。」
「フィギュアスケート…、ですか…。」
「そっ。格好いいでしょ?
応援、してあげてね。」
何故かその言い方が、自慢げで。
「はあ…。」
圧倒された私は、頷くのが精いっぱい…。
「じゃあ、よろしくね。
失礼しまーす。」
ニカっと営業用のスマイルを浮かべると、一目散に彼の元へ走り去っていく。
フィギュアスケートかぁ……。
だからあんなに、綺麗な動きなんだ。
テレビで見たことはあるけど、実際は男の人も華奢なんだなぁ…。
なんて。
それが、彼との出会いだった。
正直、その女の人の方が、印象深かったんだけど。
それから。
「知ってんでぇ、上原選手。」
仲良くなれたのは、多分、諏訪さんの関西人パワーのおかげだと思う。
何度か公園で顔を合わせるうちに、少しずつ会話が増えてきて。
いつのまにか友達になっていった。
諏訪さんがいなかったら、きっと、あれきりだったと思う。
「こいつな、こんなに小さいんやけど一応、モーグルの選手やったらしいで。」
諏訪さんの言葉に彼は驚いていた。
彼は雪山に行ったことがなかったし、私はスケートリンクに行ったことがなかった。
選手時代は競技に支障が出るので、他のスポーツなんてしたことがなかったのだ。
怪我をするといけなかったから。