* another sky *
――――!
……っ!!
――――――――――――!!
圧倒された。
震えるくらい、衝撃を受けた。
大きく手を広げてリンクに出て行く翼を見て、私は鳥肌が立つのがわかった。
最初の音が流れて、翼が動き出した瞬間。
涙がボロボロと溢れてきて、自分でもどうしたらいいのか、わからない。
有り余るオーラと、存在感がそこにはあった。
翼の、全てをぶつけられたような気がしたんだ。
「ほら、吉野。
しっかりしなさい。」
スタンディングオベーションの波に揺られて、茫然と脱力した私を、桜木さんが笑う。
「翼君、上がってくるよ?」
試合を終えた彼は、私たちに気付くと頭を下げながら近づいてくる。
「ちょっと、翼君。
吉野、どうにかしてよ。」
「何、どうしたの?」
「ふぇっ、……っ、ん、―――。」
翼の顔を見た瞬間、号泣する私を、三人は可笑しそうに笑いだす。
「何や、吉野、どないしたんや。」
「感動、したんです…。
凄いっ、凄いね、翼。
凄い、良かったぁあああ。」
泣きじゃくる私の耳元で、
「狙い通りだな。」
と、翼は笑ったのだ。
今日の試合は、現役を諦めなければならなかった玲の気持ちも、心に置いて滑ったんだよ、と。
その余韻に浸ることもなく、私は諏訪さんに頭を叩かれたんだけど。