* another sky *


「玲っ!!」


音の消えたリンクから、翼は大きな声で私を呼ぶ。


「時間あんの?
朝メシ、一緒に食べる?」


「うん。」


正直、あまりお腹は空いていないけど、ま、いっか。

金曜日に、桜木さんと飲みに行ってから、まともな食事をしていない。

梨花と久し振りに話せたこともあって、どうも頭が上手く纏まらなくて…。

月曜日に、どんな顔をして会いに行けばいいんだろう、とか考えれば考えるほど、胃が痛い…。


「仕事は?」


「今日、日曜だよ。」


「あ、そっか…。

俺、全然、曜日の感覚ないなぁ。」


さっきとは違う、クラッシックの曲が流れ始めた。


刹那、リンクの中央に向かって滑り出す、翼。

この、あっさりとした、距離感。

こういうのって、かなり、楽。

居心地は良いのに、縛られていない。


これが翼にとって、当たり前の距離感なのか。

敢えて、距離を空けてくれているのか…。

どちらにしても、何も言わずにいてくれる翼って、やっぱり普通とは違うのかな…。



「…眠っ。」


コンビニでサンドウィッチを買う翼は、大きな欠伸をする。


「ほんとに、腹、減ってないの?」


「うん。」


私に遠慮してか、翼は朝ごはんをコンビニで購入して。

そのままの流れで、翼の部屋に行く。


「寝てないの?」


「2時間くらい。
23時まで貸し切りがあって、家帰って…。
曲編集してから寝て…、4時に起きた。」


相変わらず、ハードな毎日だ。
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