* another sky *
「…あ、あのね、――――。」
「えっ?」
麻友理の声は小さくて、うまく聞き取れない。
「…、由樹が……っ、…。」
「た、高橋くんっ??
高橋君が、どうかしたの??」
麻友理は目を伏せると、瞬きで私に返事をした。
ふぅ― ……。
大きく深呼吸を何度か繰り返し、麻友理は意を決したかのように私を見つめた。
「…、あのね、由樹が…。」
「うん。」
………。
………。
「…由樹が別れようって…。」
―――――!!
「え……っ??」
高橋君が―――??
嘘でしょう…?
私は驚き過ぎて、声も出なかった。
はぁ―――っ。
大きな溜め息を吐き、視線を上げる麻友理を見て、自分が息を止めていたことに気付く。
「…っ、何、それ。
高橋君が、そう言ったの?」
つい大声を出してしまい、私は慌てて辺りを見渡した。
高橋由樹。
麻友理の恋人。
高校を卒業した二人は、一緒に上京してきた。
一応、麻友理のご両親の建前上、別々に住んでいたけれど。
確かこの1年、半同棲状態だったはずだよね。
お父さんもお母さんも公認って話してたし…。
誰の目から見てもお似合いの、幸せそうな二人だったのに。