* another sky *

大きな重い扉を開けると、冷たい空気が私の頬に触れた。

ひんやりとした冷気に、身体がひゅっと引き締まる。


―――――――。


…翼、だ。

氷の削れる音だけが響く。


今日は…、遠くから…。

こんな顔、近くで見られたくないし。


リンクの翼が上がって来られないように、観覧席の上の方に座り、私は静かに見学する。



―――――。



私が来ていることには気付いている、はず。

だけど、翼はどんなときでも集中力を途切れさせない。


いつも前を向いていて…。

どうやったら、そんなふうに……。



「……っ!!」



あ…。

駄目だ…。


泣きそう…。


感情のコントロールが、出来ないよ…。


溢れ出した涙に、抗えなくて……。


こんな顔じゃ…。


私は慌てて立ち上がった。

泣いていることをばれないうちに、外に出なきゃ。

翼には、もう弱い姿を見せたくない。


「玲っ。」


―――――。


私は聞こえていない振りをして、扉を開ける。


早く、早くっ、――――。


エレベーターのボタンを連打しながら、上がってくるエレベーターを焦りながら待つ。


「玲っ。」


バタンと大きく扉の開く音が聞こえて、ガツガツと歩み寄る翼の足音が聞こえた。


「ちょっと待てよ。」


「……っ!!」


緊張の糸が、ぷつんと切れてしまったような気がした…。
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