* another sky *
「社会人失格だぁ…。」
「桜木さんから伝言。
有給使えって。今まで使ったことないんだって?
今日と明日、二日間までなら許すってさ。」
「いや、そんなわけには…。」
「って、玲は絶対、言うだろうって。
上司命令だってよ?
吉野は絶対、従わないから、私からの命令って言ってねって。」
…っ、桜木さん…。
「後で電話しな。」
「…うん。」
私、たくさんの人に迷惑かけて…。
何、やってるんだろう…。
自己嫌悪に陥って、顔を上げることすら出来ない…。
「…どした?」
翼の、穏やかな声が、胸に突き刺さる。
「ん?」
「……っ。」
「…言いたくなったらで、いいから…。」
翼はそっと、私の頭を抱き寄せた。
優しく髪を撫でる手のひらに、どうしようもないくらい張りつめていた気持ちが、慰められていく。
翼の前だと…、私、グダグダだな…。
「たっ、たすくはどうやって…。」
「え?」
「翼はどうやって…。
辛いことや悲しいこと、乗り越えてきたの?
どうやったら、そんなに…前向きに…。」
真っ直ぐに、立っていられるの……?
泣きながら話す私を、そっと覗き込んで。
柔らかな視線が優しい…。
温かな優しい瞳に魅入られて、私は視線を逸らせない。