* another sky *
「俺、全然、ネガティブだよ?
世の中、受け止められないことが多過ぎるって。」
「…っ。ほんと、に?」
「ああ。
しんどいなって思うことも、多いしね。」
「…っ、でも…。」
「うーん。やんなきゃ進まないからなぁ。
俺だって、へこむし…。
スケートから逃げ出したことだって、あるよ。」
――――――!!
私、翼のことを…何も知らないんだ…。
「大学の頃かなぁ…。練習で全然、跳べなくてさ。
派手に転んだまま、その場から動けない時があったんだ。
怪我は大したことなかったんだけど…。
もうね、気持ちがね…、ついて行かなくなってた。」
切なそうに私を見入る眼差しは、今まで見たことのない、私の知らない翼だった。
「だけど、1ヶ月、もたなかったなぁ。
3週間くらい過ぎたらさ、もう滑りたくて仕方ないの。
ああ、俺、―――。
やっぱスケートが好きなんだ、って思ってさ。」
「そんなことが…、あったの。」
「休んでた分、さらに跳べないわ、体は重いわ、最悪でさ。
でも、久しぶりに氷に乗った瞬間、嬉しかったんだよね。」
―――――――。
「だからもう、全部、受け入れることにした。
その年は、成績もぐだぐだだったんだよ。
結構、いろんな人間に言われまくってさ…。
でも、もういいやって。
跳べないことも、試合に負けたことも。
長い人生、そんなこともあるって。」