* another sky *
アルコールの力もあって、麻友理は前の彼氏の話もした。
やっぱ、麻友理ちゃん、美人だな。
潤んだ瞳が、魅力的に映る。
こんな綺麗な子と付き合いながら浮気して…。
その彼氏、やるよなぁ、という印象。
玲の親友だからこそ、――――。
邪険に扱わないで、真剣に話を聞いていた、つもり。
「私、……。
私も渡瀬さんみたいな人に、出会えるかな?」
毎日21時になるとかかってくる電話は、もう日課だ。
玲には敢えて、言わない。
俺と麻友理の、暗黙の了解。
「俺?」
「うん。だって、渡瀬さん、すっごい優しいもん。
玲が羨ましい。」
麻友理の気持ちには、薄々、気付いていた。
だけど、俺は気付かない振りをする。
俺には玲がいるし。
本当にそう、思っていたから。
麻友理は俺が気付かない振りをしていることも、わかっていたと思う。
玲に自分から話す勇気もなかったくせに、玲ならきっと許してくれるという自信もあった。
自分の中で、いつ玲に知られても平気だという思いが、常に合ったんだ。
ただ相談にのっていただけだよって言えば、玲は何も言わないだろうと思っていたから。