* another sky *
あの時は確か、……。
夜に麻友理から電話があって……。
麻友理は何も言わなかったじゃないか…。
「逃げるようにその場を離れた玲を追いかけてきて…。
必死に、連絡先を教えてくれって懇願したそうです。
玲が、断っても、断っても、お願いだからって。
あの子、仕事中だったらしくて…。
会社の人もいる前だったから、根負けしちゃって…。
そしたらその夜…、電話がかかってきたそうです。
…渡瀬家の皆さんに、喋るなって。
二人が友達だったってことを、言わないでくれって。」
――――――!!
「まじ、か…。」
「玲がもう関係ないことを告げると、マリッジブルーなのかなって電話を切ったって。」
マリッジブルー………?
麻友理は、何を言いたいんだ?
今さら玲に…、何を…。
「渡瀬さん、――――。
麻友理と付き合い出したってことは、もう玲の事は吹っ切ったんでしょう。」
「……っ。」
「やっぱり、吹っ切れてないんだ…。
でもね、玲のこの2年間の気持ち、考えたことありますか?」
「……っ!!」
「当然、ありますよね?
玲はもう、前へと進んでいるんです。
やっと、進み始めたばっかりなんです。
もう、そっとしておいてほしい…。
あの子、一人で戦ってたんですよ?
過呼吸の発作も抱えて、……。」
「え、―――?」