* another sky *

「いいの? 私といて。
渡瀬さんとデートとか、しないの?」


「いいの、いいの。

航太とはいつでも会えるんだし。

今はね、麻友理と一緒にいたいの。」


「でも、……。

渡瀬さん、怒らない?

玲、…ずっと私と、いるじゃない…?」


つい、心配になって、聞いてみた。

そんな私を、玲は笑いながら、一蹴して。


「ああ、そんなこと。

航太はこんなことで怒ったりしないもん。

玲の好きなようにしていいって、言ってくれてるし。

ちゃんとわかってくれてるから、安心して。」


「……っ。」


何、それ、……?


玲が話す、渡瀬さんという人となりは、私の知っている男の、誰よりも優しい。

スマートで、大人。

彼女のことを、大きな愛で包み込み、大切にし、信用している。

しかも、玲の、彼氏、――――。


ドラマの中だけだと、思ってた…。

まさか、こんなにも身近に、いたなんて。


私の概念は、見事に覆されてしまう。


玲が、渡瀬さんと付き合い始めて、直ぐ。


あまりにも優しい渡瀬さんに、

「私、騙されてないかな。」

そんなふうに心配して。


田舎者の私たちにとって、驚くような優しさを持った、都会の男の人。


玲の表情がどんどん柔らかくなっていくのを、私は間近に見ていた。


玲、綺麗になったな、って。


女って、付き合う男によって、こんなにも変わるんだって。
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