* another sky *
昔はちゃんと、見てくれたのに……。
麻友理はどうしたいのっていつも聞いてくれたのに。
ご飯だって、美味しいよって言ってくれたのに。
…何、これ。
長年連れ添った夫婦みたい。
…違う。
玲と渡瀬さんはきっと違う。
結婚して、年を重ねても、手を繋いで歩いていそうな…。
そんな穏やかな空気が、あの二人にはある。
由樹、――――。
あんなに私の事を、愛してるって言ってくれたのに。
「ごめん、悪かったよ。だから、泣くな。」
「……っ。」
優しく頭を撫でられ、私の心は揺らぐ。
――――――。
結局、私は由樹から離れられない。
由樹がいないと…何もできない。
「…由樹、私の事、愛してる?」
「言わなきゃわかんないのかよ。当たり前だろっ。」
そんな投げやりな言い方でも、私は嬉しい。
「言い方が冷たくて…、寂しかったの…。」
「ごめんって。
…じゃあ、連休、ご飯でも食べに行くか?」
「…うん。」
由樹は私の肩を、抱き引き寄せた。
顎をそっと持ち上げられ、由樹は私にキスをする。
いつも…そうだ。
喧嘩のあと、私たちはお互い、愛を確かめ合う。
私は由樹しか知らない。
二人で触れあえば、どんな悩みでも解決するかのように錯覚していた。
それが由樹の一方的な行為だとしても、由樹しか知らない私にわかるはずがなかった。