* another sky *
生理が遅れていることに気付いた時は、愕然とした。
あの頃、由樹が避妊しなかったことは何度かあったから。
もう、絶対、そうだ。
私は早い段階から自分が妊娠していることに気付いていた。
でも、――――。
「別れたくないっ!!
由樹がいないと、生きていけないのっ。」
泣き叫ぶ私に悪気もなく平然と、
「好きな人ができたから。」
と言い放つ、由樹。
頭の中でリピートするその声に、私は振られたんだと、やっと自覚した。
お互い、両親からも、友人からも公認だった。
卒業したら、地元に戻って就職して、時期をみて結婚するものだと信じていた。
由樹のいない人生なんて考えたこと、なかった。
それほど私は、由樹に依存していたんだ。
妊娠したこと…、由樹に話そうか…。
由樹と私の赤ちゃんだもん…。
戻ってきてくれるかな…。
そんな甘い考えが、なかったわけじゃない。
由樹とは一緒にいたかった。
だけど、母親になる覚悟は、私には無かった。
現実逃避、…してたんだと、思う。
つわりが始まった頃、もう逃げられないと、覚悟を決めた。
玲は何も言わなかった。
命の大切さを説いたり、産みなよ、とも、中絶を薦めることもなかった。
私が選んだ結果を、そのまま受け入れて…。
一生懸命、そばにいてくれた。