* another sky *
struggle to escape
「吉野、午後から『アドバンス』との打ち合わせ、大丈夫か?」
「あ…。」
「何なら俺一人でも構わんけど?」
諏訪さん…。
諏訪さんの配慮に、私は嬉しくなる。
だけど、これは仕事。
「大丈夫です。行けます!」
今日は私たちがアドバンスへと、出向いて行かなければならなかった。
自社や出先で打ち合わせをするのではない為、佐藤君に会う確率はやっぱり高くなる。
でも、そんなこと、言ってる場合じゃない。
自分で最後までやり遂げてみせる。
これは初めて私が任された、譲れない大切な仕事だから。
「じゃあ、16時に品川駅の中央改札で。」
「はいっ。」
「何かあったら、すぐに連絡せえよ。
俺、先に現場に向かってから行くし。」
諏訪さんの…、さりげない優しさが有り難い。
でも、私が諏訪さんに応えられるのは、仕事だけ。
支えてくれる人の為にも、この案件をきちんとまとめ上げないと。
よしっ、頑張んなきゃっ。
午前中をかけてパソコンに向い、提出する資料を作り上げる。
桜木さんにチェックしてもらい、私はアドバンスへと急いだ。
はぁ、……。
電車に乗り込むと、大きな溜め息が出た。
流れる景色を見ながら、やっと自分の時間ができたことに、ホッとした。
――――――――。
あ、そうだ。翼にメールしなきゃ…。