* another sky *
タクシーの窓から見える、白く輝く丸い月。
これ見よがしに光り輝き、静かに明け方の街を照らしている。
そういえば、……。
ずっと昔に、二人で、……。
見上げた空に輝く、黄金の、月。
あの時の月とは、何かが違う…。
ああ、そっか。
濃紺の夜に輝くあの時の月と、もうすぐ夜が明けようとしているこの空を照らす月じゃ、輝きが違って見えるんだ…。
どちらも同じ、月なのに。
目に映る輝きは、時と共に変わっていくんだ。
麻友理………。
あの時も、二人で泣いたんだっけ…。
ねえ、―――。
どこで歯車は、…狂ってしまったの…。
麻友理を、嫌いになりたかった。
どんなに避けようとしても、忘れようと努力しても、駄目だった。
付きまとう不安に、心がざわめいて、穏やかにはなれなかった。
翼に触れて、……。
やっと、一歩、踏み出せたと、思ったのに。
もう、一切、関わりたくなかったのに。
さっきまで、もう、――――。
巻き込まれたくないって、思っていたのに…。
もう、噛み合うこと、ないのかな…。
私たちはもう、歩み寄ることすら、出来ないのかな……。
私はただ、子どものように声を上げて泣いていた。
そんな私の手を、翼はしっかりと握りしめてくれていた。
神様。
麻友理を、
連れて行かないで…。