* another sky *
コンコン――。
小さく響く、ノックの音。
申し訳なさそうな顔をして、航太は病室へと入ってくる。
「遅くなって、ごめん。」
あれから、20分ほど経つ。
面会時間は、もうとっくに終わっていた。
あのまま、……。
航太も帰ったのかと、思ったよ…。
航太が来てることなんて、私は知らないんだよ。
「…航太…。」
私はゆっくりと起き上がった。
「体調、どう?」
気遣ってくれてるのが、痛々しい程、わかる。
ねえ、――――。
あのまま帰らないで、ちゃんと顔を見せに来てくれただけで、もういいよ。
それが、あなたの優しさ、なんだよね。
「起きて平気なの? 寝てて、いいんだよ。」
「…大丈夫だから。」
「そっか。面会時間過ぎちゃったから、そんなにいれないんだけど。」
勘違いしてたな…。
私のことが好きだから、優しくしてくれるんだって思ってた。
馬鹿だね、……。
今頃になって気付くなんて。
優しい、優しい人、なんだよね。
単純に、それだけ。
勝手に追いかけまわされて、人生グダグダ。
ちょっと優しくしただけなのに、ね。
笑っちゃうくらい、悲惨じゃない…。
おまけに自殺騒ぎまで起こされちゃって、かわいそうすぎる。
だけどね、航太。
もう少し、嫌な思い、してもらうわよ。
私からの、最後の…プレゼント。
一生、思い出したくないくらい、嫌な女になってあげる。