* another sky *
「…最低だな、お前。」
怒りを通り越して、呆れていた。
「航太に最低呼ばわりされる覚えはないわ。
航太の方こそ、玲、玲、玲って最低だったじゃないっ。
そんなに玲を愛してたんなら、何で私に靡いたのよ。
今頃、一緒にカナダに行けてたんじゃないのっ?」
「……っ!!」
「もうここには、顔を出さないで。」
「…わかった。
二度と、お前になんか会いたくない。」
「会わないわよ。航太になんか。
私は幸せになるんだから。」
「ああ、――――。
どうぞ、幸せになってくれ。」
ガタンッ、―――――!!
立ち上がると同時に、蹴り上げた椅子。
大きな音が病室に響くと、麻友理は怯えた表情を見せた。
「航太。」
俺はもう、振りかえらなかった。
スタスタ歩き、ドアを開ける。
「ありがとう。航太。」
背中越しに聞こえた麻友理の声を無視して、俺は廊下へと出る。
音に反応したんだろう。
ナースセンターから看護師が、こちらを訝しげに見つめていた。
何だったんだ。
今までの、この時間は何だったんだ。
俺は、本当に自分が情けなかった。
玲をあそこまで苦しめて、…。
そこまでして手に入れたものは、―――。
「……っ。」
今すぐにでも、玲に連絡したい。
玲を抱きしめたい。
――――――――!!
悔しかった。
情けなかった。
もう、この運命を受け入れるしか、ないんだ。
諦めるしか、ないんだ…。
玲…。
――――――――!!
空を仰いで、息を吐く。
いつか、また、会えるんだろうか…。
俺は強く唇を噛みしめて、溢れそうになる涙を堪えたんだ。