* another sky *
あれから、――――――。
本来の予定通り、航太はカナダへと旅立った。
紺ちゃんと綾子、そして佐藤君を含めた学生時代の友人たちに、盛大に見送られて…。
「最後かもしれないでしょ。
一緒に、見送りに行こう。」
何度か綾子に誘われてはいたけれど…。
私は、やっぱり遠慮した。
最後にちゃんと話せて…、本当に良かったと思う。
あれで、区切り…が、付いたんだと思うから。
苦しかった、2年間。
夢にまで見た、情景だった。
玲、―――と、呼んでほしい。
大好きだった、口角のきゅっと上がったあの笑顔で、……。
もう一度、抱きしめてほしい。
そう願っては、目覚めた後の、現実の無常さに打ちのめされて…。
ロビーで抱きしめられた時、……。
あの時は、溢れだす感情の波に抗することが出来なかったけれど…。
航太のもとへ戻りたい?
航太に、もう一度、愛されたい?
今なら、きっと…。
私たちは、やり直せるかもしれない。
何度も頭を過ったこの思いも、行きつくところは、たったひとつ。
うううん。
私はやっぱり…、航太には戻らない。
戻れないんじゃなくて、戻らない。
全てを無しにすることなんて、私の性格上、…出来ない。
無理、だもん…。