* another sky *


桜木さん、――――?


「はい。吉野です。」


「あ、吉野、今どこ?」


「駅です。今から会社に戻ります。」


「あ、ごめーん。
なんかお菓子、買ってきてくれない?」


「はっ、―――?
お菓子、ですか?」


「甘いもの、食べたいのよ。」


「桜木さんが食べるんですか?」


「そう。コンビニのやつでいいから。

適当に買ってきて。

今日、残業するのにおやつがないの。」


おやつ、―――――?


「は、はい。わかりました。」


桜木さん、何、言ってるんだろう?

おやつ…、お菓子なんて、食べる人だったっけ?


不思議に思いながらも、近くのコンビニでお菓子を適当にかごに入れる。


どれくらい、買えばいいんだろう?


そう思って、顔を上げた時だった。



―――――――!!!



た、すく??



コンビニの外を、翼が歩いていた。


真っ直ぐな、美しい姿勢で歩く翼に、周りのみんなが振り返っていく。



「……っ。」



横断歩道で信号待ちをしている姿さえ、普通の人とは違う。


凛としたオーラが輝いていて、人の視線を惹きつけていく。



翼、―――――。



ぎゅっと心臓が痛くなり、ドクドクと脈打ち始めた。



最後に会った時よりも、短くなった髪。

携帯を操作する指先に、キュッと心が悲鳴を上げる。


あの手が、あの指が、私に触れていたなんて、思えない…。
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