* another sky *
「……っ。」
声をかけようかと思って、躊躇った。
何て、声をかけたらいいの…?
翼、―――――。
私はここにいるよ。
こんなに近くに、いるのに、…。
声をかけることすら、出来ない臆病な自分が情けない。
―――――――!!
「……っ。」
ま、まさか…。
桜木さんっ、―――――!!
そうだよ、そうだよ。
あの人、甘いの、苦手じゃん。
お菓子買ってきて、だなんて。
諏訪さんなら、まだしも……。
よく、よく考えたら、ありえないじゃない。
まさか、足止めするつもりで…?
そうだよ、きっと、そう。
だいたい、何でこんなところに翼がいるのよ?
こんなオフィス街に、翼がいるわけ、ないじゃない…。
私とばったり顔を合わせるように、
「おやつ買ってきて。」
なんて言って、私に足止めさせたんだ…。
諏訪さん…?
桜木さん…?
絶対に、あの二人だ、―――。
もうっ、―――――!!
信号が変わって、翼は歩きだす。
―――――。
翼…。
泣きそうになって、座り込んでしまう。
「あ…。」
だめだ、私…。
嫌でもわかってしまった…。
私の心が、今、どこにあるのか。
私の心に、誰がいるのか…。
私が今、どうしたいのか……。
「……っ!!」