* another sky *
日が落ちてもまだ蒸し暑い、真夏の夕方。
オレンジと紫と、深いブルーが混じった空には、一番星が光っていた。
青い顔をして病院から出てきた麻友理。
私の顔を見つけると、弱々しく笑ったんだ…。
―――――!!
その瞬間、突き刺さるような痛みが胸に広がった。
だめ、私が泣いちゃだめ。
私が泣いたら、麻友理は、泣けない!
急いで駆け寄って、麻友理の腕を取る。
「自分の家に…、帰りたくない…。」
麻友理の部屋にはまだ、高橋君の荷物が残っている。
「いいよ。うちに帰ろう。」
私は麻友理の腕をしっかりと掴むと、必死に涙を堪えたんだ。
私の小さな部屋で、ベッドに横になる麻友理。
天井を見上げ、声を出さず泣いているその姿は、本当に痛々しくて…。
麻友理の周りだけ、空気が震えているようだ。
大粒の涙が、あとからあとから零れ落ちていく。
「……っ。」
声をかけることすら、出来なかった。
ただ、一緒の空間に、いるだけ―――。
「…私が…、死ねば…よかった…。」
―――――!!
麻友理の呟きに、私は…、声を押し殺して、泣いた。
何も言えない自分が不甲斐なくて、歯を食いしばって嗚咽を我慢した。
この狭い空間だけが、時間が止まっているようだった。