* another sky *
麻友理さんの傷は深く、出血量も多いことから、救急センターでしばらく様子を見るということらしい。
蛍光灯の下で眠る麻友理さんは、普段の生活の中では、美しい人の部類に入るんだろう。
長い睫毛も、すっと真っ直ぐな鼻筋も、綺麗な顔立ちは、目を閉じていてもわかる。
確かに、綺麗なひとだ。
だけど、――――。
これ見よがしに、自分から死のうなんて考える女なんか、俺からすれば馬鹿だとしか言いようがない。
玲や友達に、ここまで心配かけて、何を考えてるんだ?
親や家族のことを考えたことがあるのか?
周りを振り回して、いったい何様のつもりなんだ?
浅はかな、女だよ。
ったく、―――――。
重てぇよ。
話したことも、ないのに。
いつまでも玲を苦しめる麻友理さんに対して、かなりの嫌悪感。
「……っ!」
明々とした蛍光灯の下で眠る彼女を見つめながら、小さく震えている玲の肩を抱いた。
こんなにも思ってくれている友達が、いるんだぞ…。
心配してくれる人の気持ちがわからないなんて…。
そこまでその男に入れ上げていたってことなのか…。
男しか、おまえの人生には、ないわけ…?
こんなにも綺麗な顔して、おまえ、残念すぎるだろう…。
――――――――。
「あの…。上原さん。」
不意に名前を呼ばれて振り返った。
りょうちゃん、と呼ばれていた藤池さんだった。