* another sky *

「ったく…。
朝っぱらから蝉がうるせーな…。」


航太は目を細めながら、空を見上げて項垂れた。


現在の気温は、32℃。

しかもまだ、午前10時を過ぎたところ。


「午後からさらに暑くなる予定ですって、天気予報が言ってたよ。」


「まじか…。
早く終わらせて、涼しいとこ、行こうぜ。」


雲ひとつない、コバルトブルーの空には、強くて眩しい真夏の太陽が輝いている。

今日は夏休みの旅行の申し込みをしようと、朝から航太と待ち合わせ。

夜には麻友理たちと会うから、航太とのデートは夕方まで。

明後日から実家に帰る私にとっての、貴重な航太との、時間。


ここ最近、私が麻友理を優先させていることに航太は何も言わないでいてくれた。


「俺も友達と遊んでるから、気にすんなって。」


そんな気遣いが、嬉しい半面、申し訳ない気持ちでいっぱいで…。

せめて、二人で過ごせる時間くらい、航太の我儘を聞いてあげたいなって、思っていた。


「北海道、楽しみだね。」


「涼しいといいなぁ…。」


結局、国内3泊4日、北海道の旅。


「何で国内の方が、高いんだよ。」


「確かに、グアムや韓国の方が安かったかもね。」


「本場の焼肉、食べたかったなぁ。」


「誰かさんのパスポート、切れてたもんねぇ。」


私は思い出して、クスクスと笑う。
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