* another sky *


そいつは…、されるがままで…。

振りほどこうともせず、玲の拳を受け止め続けていた。

玲を見つめる、深く傷ついた瞳。


こいつも、被害者、なんだよな…。


俺は悔しさも相まって、唇を噛みしめる。


「麻友理を選んだんじゃないっ!

麻友理を選んだんでしょうっ!!

二人が愛し合ってるって、思ったからこそっ…。


私はっ、――――!!


この前だって、麻友理、幸せそうに笑ってたのっ。

二人は幸せになってるって、思うじゃない。


なのに、何でよっ!!


何でこんなことに、なっちゃうのよっ!!」


――――――――!


これは、玲の本心だ。

二人が愛し合っていると思ったから、…離れたんだよな、玲。

自分が離れれば、みんなが幸せになるって思ったんだもんな…。

ずっと一人で、抱え込んできたんだ。

やっと、乗り越えようとしているこの時に、あまりにも残酷すぎる。


「許さないんだからっ!」


そいつは泣き喚き、叩きつける玲の両腕をそっと掴み、ふわりと玲の背中に腕を回した。


「……っ。」


何をするのかなんて、そこにいた誰もがわかっただろう。


「触らないでよっ!離してっ!!」


暴れても、暴れても、小さな玲の体は簡単にそいつの腕の中に納まっていく。


「いやっ!!

航太、離してっ!!」


玲は、……。

そいつの腕の中で、泣き喚いていた。


「…ごめん、な…。」


何度も、何度も繰り返される、その小さな声に、玲の力も抜けていく。
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