* another sky *
「……っ。」
愛しそうに、大事なものに触るかのように。
優しく回された腕の中に納まる、玲。
大きな声に驚いてか、藤池さんも近くにいる。
本来、あるべき姿、―――、ですか…。
この二人がどんなに愛し合っていたのか、…俺にも伝わる。
本当に、…いきなり終わってしまったんだな、玲…。
「……っ。」
正直、見ていられなかった。
さっきまで俺の腕の中で震えていた玲が、他の男の腕に抱かれているんだ。
不可抗力…?
わかってる。
わかってはいるけれど、心の中は動揺でいっぱいだった。
玲の頬に流れる涙に、そいつはそっと指を伸ばす。
触るな、―――――!!
俺の念が通じたのか、はっとしたように玲は後ずさりした。
「触らないでっ!!」
「…ごめんな。」
玲の突き刺すような言葉に、そいつはもう一度小さく「ごめん。」と呟きながら…。
ぐっと唇を噛みしめ、玲の瞳に訴えかけるような視線を送る。
「……っ。」
そして、諦めたような表情で、その場を後にした。
悲しみでいっぱいの、その眼差しのまま、そいつは救急センターの中へと入っていく。
玲はその背中を見送りながら、彼の動向を見守っていた。
ベッドで眠る麻友理さんのそばで、ずっと手を握りしめる姿に、茫然として。
まるで、俺なんか……。
この場所に、存在してないようじゃないか。