* another sky *


帰ろう。


俺がここにいても、仕方ない。


これは敗北感じゃない。


ただ、苦しくて、空しくて。


俺はその場を、後にした。



「たすくっ!!」



振り返ると、玲が走って追いかけてきていた。


「…玲。

もう、ここでいいよ。」


俺は穏やかな口調で、話す。


「私も…、帰る。」


――――――!?


「そばにいてあげた方が、いいんじゃないの?」


玲の頭にそっと手を乗せ、顔を覗きこんだ。


「……っ。」


ハッとしたような瞳で見つめ、うるうると涙が溢れそうになっている。


「…いいの。」


ぎゅっと目を瞑ると、玲の目から一気に涙がこぼれ落ちた。


―――――――。


「私がいたら…、駄目だと思う。」


「本当に、いいの?」


「また…、来るから。」


「そっか。

…じゃあ、一度、帰ろうか。」


帰りのタクシーの中、俺は何も言えなかった。


玲は俺を窺っている。


自分の気持ちが揺れたのを、俺がわかってしまったことに気付いているからだ。


玲、……。

玲のそばで支えてあげようと思ってるよ。


だけど、それは玲が俺を選んでくれた場合だ。


この期に及んで、嘘は吐かないでくれ。

自分の選んだ道を、進んでくれ。


たとえ、それが俺にとって辛い現実となっても…。


玲が自分に正直に向き合ったのならば、俺はそれを受け入れるから。

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