* another sky *
「翼、事務所にチケット届いてるぞ。」
「あ、はい。」
そっか…。
チケット…。
アイスショーまで1ヶ月を切った。
それなのに、今の俺はショーに全く気持ちが向かないでいる。
「何、滑る予定?」
「考えてはいるんですけど…。」
「まだ決めてないの??」
「……。」
あの公園で、―――――。
初めて玲を見つけた日の話を、した時。
キラキラとした瞳で、話を聞いてくれた玲。
あの笑顔がチラついて、曲の編集すら出来ないでいる。
ロミジュリ、やめようかな。
考えてみれば、悲恋だし。
ロミオを演じるには、俺、もうおっさんだし。
全く持って、手につかない。
正統派のバレエで行くか、ジャズとかにするか…。
曲くらい早く決めないと、振り付けだって出来やしない。
―――、あ。
そういえば、諏訪さんにチケット、頼まれていたんだった。
玲から渡してもらおうと思ってたけど、今はそうもいかないし。
ぐあああーっ!!
今は玲の近くを、ウロウロしたくないんだけどな。
俺は携帯で諏訪さんのアドレスを出す。
仕方ない。
連絡、してみるか。