* another sky *


「翼、事務所にチケット届いてるぞ。」


「あ、はい。」


そっか…。

チケット…。


アイスショーまで1ヶ月を切った。

それなのに、今の俺はショーに全く気持ちが向かないでいる。



「何、滑る予定?」


「考えてはいるんですけど…。」


「まだ決めてないの??」


「……。」



あの公園で、―――――。


初めて玲を見つけた日の話を、した時。

キラキラとした瞳で、話を聞いてくれた玲。

あの笑顔がチラついて、曲の編集すら出来ないでいる。



ロミジュリ、やめようかな。


考えてみれば、悲恋だし。


ロミオを演じるには、俺、もうおっさんだし。



全く持って、手につかない。



正統派のバレエで行くか、ジャズとかにするか…。

曲くらい早く決めないと、振り付けだって出来やしない。



―――、あ。


そういえば、諏訪さんにチケット、頼まれていたんだった。

玲から渡してもらおうと思ってたけど、今はそうもいかないし。


ぐあああーっ!!


今は玲の近くを、ウロウロしたくないんだけどな。


俺は携帯で諏訪さんのアドレスを出す。


仕方ない。


連絡、してみるか。

< 547 / 769 >

この作品をシェア

pagetop