* another sky *


「じゃあ、1時間くらいしたら、玲の家に迎えに行くよ。」


「わかった。」


よっしゃ、―――。

知らずに緊張していたのか、大きく息を吐いた。


勝算がないわけじゃない。

時間はかかるかもしれない。

俺は自分の気持ちを貫くしかないんだし。

だけど、まずは、玲がどうしたいのか、ちゃんと話を聞こうって。

会わずに過ごした時間の中で、俺は早い段階でそう決めていたんだ。


もし、終わってしまうのなら、―――。

きちんと終わることも、大事なこと。

受け入れることも、愛、だよな。


結局、惚れた方が、負け、なんだよね。

いい結果じゃなかったとしても、もう、玲は泣かせたくない。

笑って背中を押してあげるくらいの、男になりたいよ。

そしたら、……。

玲もまた、苦しまなくて済むだろう…?


「おじゃまします。」


玄関のドアを開けた玲は、まあ、いつもの玲で。

昨日の甘えた顔なんて、想像できないくらい、凛としてる。

俺の中でツボったのか、思わずにやけて俯いた。


「これ、お土産。」


「わあ、―――。

わらび餅だ、美味しそう。

冷やして、後で食べようね。」


「すぐ、出れるの?」


「うん。ちょっと待ってて。

お財布、……。」


リビングにバッグを取りに戻ろうとする玲の腕を、掴まえた。


「玲、―――。」


「ん?」


「先に、話がしたいんだ。」
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