* another sky *


「たす―――。」

「ケリはついたの?」


―――――――!!


同時、だった。


嘘やごまかしは嫌いだ。

はっきりと、玲の口から答えが聞きたいんだよ。

そんな俺の意図を汲み取ったかのように、玲は大きく息を吐くと、俺を真っ直ぐに見つめて話しだした。


「ケリっていうか、ね。

麻友理のお見舞いに行った時、航太と病院で会ったの…。」


―――――。


あの後も、また、あいつと会ったのか…。


俺は玲に気付かれないように、唾を飲み込む。


「ちゃんと、向かい合って話をすることが出来たよ…。

辛かったこととか……。

自分の思ってたこと、全部、言えた。

だけど、いい思い出はそのまま残したいから…。

あの頃、すごく幸せだったから…。

そう思えるまで時間はかかったけど、今の私はそんな過去の上に成り立ってるから…。

えっと…。」


ひとつひとつ、言葉を選びながら、玲は必死に何か伝えようとしている。


「翼。」


「ん?」


「私、あの時…、ね。

翼の見てる、目の前で…。」


――――――。


ああ、思い出しただけで、虫唾が走る。

出来れば、忘れてしまいたい。


忘れられる、ものならば。


未だに、考える。

あの時、離して良かったのかと。


あんなもん、見せつけられる為に、…。


玲を、この腕から、手離したんじゃない、と。
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