* another sky *


「あれから、私は考えたの。

もしかして、まだ好きなのかなとか、戻りたいのかな?とか…。

戻りたいのなら、今なら戻れるんじゃないかって。…」


――――――――。


その後に続く言葉が、正直、…怖かった。

俺の脳裏に、あの時の玲が過る。

切なそうに、あいつを見つめていた、あの眼差しが…。


「結論は、―――――。

戻りたいとか、戻れないじゃなくて、私は戻らないんだって。

だから、ちゃんと航太と話が出来たの。

辛かったって言えたし、ありがとうってことも、伝えられたし。

自分の中で、あの2年間が過去となって…、振り返ることが出来た。」


―――――――――。


「……、だけど…。」


「……っ!!」


「航太にね、抱きしめられた時、拒めなかった…。

麻友理を心配そうに見つめる姿っていうか…。

そういうの、目の当たりにしたら……。

辛くなっちゃった。

何だろう…、胸が痛くて、苦しくて…。」


玲の視線、あれは、嫉妬だ。


玲の知らないあいつと麻友理さんの、過ごしてきた時間を垣間見て、…嫉妬したんだよな?

短い時間かもしれないけれど、あの二人にも愛が合ったんだ。

それに気付いたんだよな…。

切なくて苦しい眼差しは、必死に現実を受け入れようとする玲の足掻き…。

まだ玲の中に、――――。

あいつに対する気持ちがあったことが、俺にはショックだったんだ。

< 563 / 769 >

この作品をシェア

pagetop