* another sky *
「昨日、会社の近くで…、翼を見かけた。」
「え、そうなの?
声、かけてくれれば良かったのに。」
ああ、諏訪さんにチケット渡した時か。
何だ、玲、近くにいたのなら…。
「えっ??」
ふと顔を上げると、玲は顔をグシャグシャに歪ませて、泣いていた。
それも、号泣の域で。
「わ、玲、泣くなよ。」
俺は驚いてしまって、為す術もない。
ちょっと、待って。
どこでそんなに号泣するポイントがあった?
俺、何か追い詰めた…?
「私、声、かけれなかった…。
あんなに近くにいたのに、……っ。」
狼狽える俺を、玲はしっかりと見据えて言った。
―――――――!!
「昨日ね、―――。
自分の中で、翼の存在の大きさに…、気付かされたの。
私の心は…、翼を求めてた。
苦しいくらいに、翼を必要としていることに、気付いた…よ。」
――――――!!
何だよ、それ…。
急に出された結論に、俺の頭がついていかない。
「私は、翼のそばにいたい…。」
「玲…。」
…っ、なん、なんだよ…。
俺も、泣きそうだっつーの…。
「…ふぇ、…っ、…。」
しゃくりあげながら、嗚咽を繰り返す玲に、俺はかける言葉が見つからなくて。
恐る恐る玲の頬に触れると、ビクンと震えながらもこっちへと瞳を向ける。