* another sky *


喧騒の中、――――。


スポットライトが照らされた。


一瞬の静寂の後、響き渡る、歓声。


白く冷たい氷のリンクは、青い光が漂うステージとなり、翼の白いシャツが浮かび上がった。


「翼くん、格好いいねっ。」


桜木さんが、私の耳もとで囁いた。



映画『Romeo + Juliet』からの、


『Kissing you』



「ふ、ふぁ…。」


緊張で震え出した私の手を、桜木さんが、ぎゅっと繋いでくれる…。

切ないイントロが流れ始めると、大きく息を吸い込んだ。


翼の姿を、……。


しっかりと目に焼き付けたい。



私たちの出会いは、偶然だった。


戸惑い。


いきなり声をかけられて、びっくりしたんだからね。


あの時は翼のこと、何も知らなかった…。


まさか、――――。


あの出会いが、私の運命を変えてくれるなんて、思いもしなかった…。


最初は私、無愛想だったね。

一生懸命、話しかけられても、すぐに会話が途切れちゃう。

よく翼、めげなかったよね。

今、思い出しても、笑っちゃう。

私って、酷いよね。


だけどね、これ、言ったことないけど…。

…第一印象はびっくりしたけど、悪い印象じゃ、なかったの。

ストイックに自分と向き合う翼に、私は目が離せなかったの。


何でだろう。

私もきっと、―――。

知らず知らずのうちに、気になってたのかもしれないな…。
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