* another sky *
「この後どうする?
映画でも行こうか、玲ちゃん?」
麻友理に意識を奪われていた私を見透かしたように、航太は私の頭をそっと撫でる。
「あ、ごめん。そうだね。
…涼しいとこが、いいよね?」
もうっ。
今は航太と一緒にいるのに…。
こうやって航太にまで気を使わせちゃって、単細胞な自分が、情けない。
「涼しいとこか…。じゃ、決まりだね。」
航太は満面の笑みで私の顔を覗き込む。
「どこ、どこ?」
映画かな。
水族館とかも、涼しくていいかも。
私はワクワクしながら、航太を見上げた。
「玲の家。」
「うち?」
「今日は夕方からまた麻友理ちゃん達と会うんでしょ?
明後日から玲も実家に帰省するんだし…。」
「お盆、終わったらすぐ帰ってくるよ?
5日間だけだよ?」
「その後もすぐに会えないでしょ?」
―――――!!
「そっ、そうだけど…。」
「久し振りに会えたんだからさ。
玲ちゃんに、癒されたいなぁ…。」
「……っ。」
出たっ!!『玲ちゃん』っ。
もうっ!
…その笑顔、明らかに反則。
「ほら。暑いから早く帰ろう。
涼しい所で、たくさん話、聞いてあげるよ?」
―――――。
あーあ。
結局、私は負けてしまうんだよなぁ…。
でも。
今は航太の優しさに、素直に甘えたいのが本音…。
私は泣きそうな顔で、航太を見上げた。