* another sky *
「連絡くらい入れときなよ。
何も言わないで来たんだろ?」
紺ちゃんはコーヒーを注ぎながら私に声をかけた。
「そうよ。絶対、心配してるって。
それ飲んだら、早く帰りなさい。」
―――――――。
そうだよね…。
何も言わないで出てきちゃったから、心配してるよね。
「着信、あるんじゃないの?」
「うううん、…絶対ないと思う。」
こういう時の翼は、絶対に自分から連絡してこない。
ほらね、…。
私はポケットの中から、携帯を取り出した。
着信も受信も、何にもない。
「二人に愚痴を聞いてもらったら、ちょっとすっきりしたかも。
ちゃんと話しあって、仲直り、しなきゃ。」
「またいつでも、どーぞ。」
綾子はにっこりと笑って、私を見つめた。
「玲が上原さんに大切にされていて、私は嬉しい。
玲には幸せになってほしいから。」
「…うん。」
そうだね、――――。
翼は私を、大切にしてくれる。
言わなくてもわかってくれるからって甘えないで、ちゃんと話さなきゃ。
問題は、……。
どう切り出すか、…だよね…。
「二人とも、ありがとう。」
私はお礼を言って、部屋を出た。
さてと、―――――。
帰ろうかな…。
きっと、翼は、心配して待ってるはずだから。