* another sky *

「何か、航太、ずるい。」


唇を尖らせた私に、航太は柔らかな眼差しを向ける。


「どこが?」


「だって、全部、わかってそうなんだもん。」


「まあね。玲のことなら、だいたいわかるかな。」


―――――。


「ごめんね。気を使わせちゃったね。」


航太は私の肩を抱くと、そっと頭に唇を落とす。


「玲を癒すのは、俺の役目だからね。」


……っ。


敵わないなぁ。


つい、何でも抱え込んでしまう私を、さりげなく引っ張ってくれて。

一杯、一杯になりそうなところで、上手くガスを抜いてくれて。


「さあ。帰ろ?」


目を細めて、背中に手を回す航太を見上げながら、私は素直に頷いた。


「ありがとう、航太。」


あなたのその優しさのおかげで、私はいつも穏やかでいられるんだよ。


航太の腕に、そっと自分のそれを絡ませた。


「珍しいね、玲から甘えてくるなんて。」


「そうかな?」


「俺はいつだって、デレデレに甘えて欲しいんだけど。」


「でっ、デレデレは…ちょっと難しいかな…。」


「ははっ。
その真面目な切り替えしが玲だよな。」


「ごめん…。」


「いいや、玲はこれで十分。

しっかり伝わってくるから、これでいいよっ。」


家に辿り着く頃には、幸せな気持ちになっていた。
< 61 / 769 >

この作品をシェア

pagetop