* another sky *
「何か、航太、ずるい。」
唇を尖らせた私に、航太は柔らかな眼差しを向ける。
「どこが?」
「だって、全部、わかってそうなんだもん。」
「まあね。玲のことなら、だいたいわかるかな。」
―――――。
「ごめんね。気を使わせちゃったね。」
航太は私の肩を抱くと、そっと頭に唇を落とす。
「玲を癒すのは、俺の役目だからね。」
……っ。
敵わないなぁ。
つい、何でも抱え込んでしまう私を、さりげなく引っ張ってくれて。
一杯、一杯になりそうなところで、上手くガスを抜いてくれて。
「さあ。帰ろ?」
目を細めて、背中に手を回す航太を見上げながら、私は素直に頷いた。
「ありがとう、航太。」
あなたのその優しさのおかげで、私はいつも穏やかでいられるんだよ。
航太の腕に、そっと自分のそれを絡ませた。
「珍しいね、玲から甘えてくるなんて。」
「そうかな?」
「俺はいつだって、デレデレに甘えて欲しいんだけど。」
「でっ、デレデレは…ちょっと難しいかな…。」
「ははっ。
その真面目な切り替えしが玲だよな。」
「ごめん…。」
「いいや、玲はこれで十分。
しっかり伝わってくるから、これでいいよっ。」
家に辿り着く頃には、幸せな気持ちになっていた。