* another sky *

「…玲は可愛いなぁ。」


「え、―――?」


見上げた瞳の近さに、心臓が跳ねる。

航太の指は、弄ぶかのように私の唇を、撫でていく。


「俺、玲を一人占めしたい。

どこにも行かさないで、ずっと俺の手元に置いておきたいよ。」


「……っ。」


刹那、完全に動きが止まってしまう、私―――。


こういうのをノックアウトっていうのかな。


やばい…。頬が…熱い。


全神経が、頬に血流を送り出す指令を出しているみたいだ。


一気に真っ赤になった私を見て航太は、ハハッと、笑う。


「玲、暑いの?」


「…、暑くは、…ない。」


涼しい部屋の中で、自分の頬の熱だけが異常上昇中。


仕方ないよね、雪国育ちなんだもん。

子どもの頃、よくからかわれたんだもん、『りんごちゃん』って。

緊張するとすぐに赤くなる、コレ…。

航太と一緒だといつも、そう。

耳まで真っ赤になっちゃって。


もう、ほんと嫌だ…。


「玲。いつも思うんだけどね。」


―――――!!


はいはい、わかってますよ。

すぐに赤くなるって言いたいんでしょう?

もう、十分、自覚してるから…。

出来れば、あんまりふれないでほしいのっ。

気にすればするだけ、どんどん真っ赤になっていくだけなんだから…。
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