* another sky *

確かに、―――。

この前喧嘩して以来、俺と一緒の時は、女の子らしい格好をしてくれるようにはなったけど。


今日もオフホワイトのワンピースに、少し高めのヒール。

化粧だって、明るいオレンジのグロスが玲の白い肌を引き立てている。


会社に行く時の玲とは、大違いだ。

何しろ、アイラインがばっちり。

スーツの色だって、黒、紺、グレー、ベージュのローテーション。

リクルートスーツかよ、と突っ込みたくなるくらいの地味さ。

家を出て行く時から、何やら怖そう…。


「早く着たいなあ。綾ちゃんの結婚式、楽しみーっ。」


組んでいた腕をぎゅーっと握りしめ、玲は無邪気に笑う。


「みんなにあのドレス姿の玲見せるの、やだなあ。」


「何、それ。」


この、ゆるっとした玲は、俺だけの特権なの!

こんな可愛い姿、他の奴らになんか、見せたくないっつーの。


お互いに口にはしないけど、さ…。

当然、『航太さん』もいらっしゃるわけで。


あいつになんか、見せたくないだろ…。

ってか、会わせたくない。


刻々と近付くそのイベントは、俺の中で微妙に影を落としていく。


玲はどう思ってんのかな。

二次会もあるしなあ…。

朝から晩まで、なげえよ、ったく。


一日中、気を張ってないと…。



油断、出来ないし!!



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