* another sky *

「ありがとうございます。佐藤君、お久しぶりですね。」


梨花は、余裕さえある笑顔で佐藤君に声をかけていた。


素晴らしい、大人の対応。

梨花、恐るべし


「玲、――――。」


その時、聞こえた、懐かしい声。

私は目の前に立つ、航太を見上げた。

少し痩せたのかな。

私の、大好きだった人が、目の前に立っている。


「航太、久しぶりだね。」


めいっぱい幸せそうに笑う、とか、大人の対応、とか。

そういったこと、全部…、吹っ飛んじゃってた。

航太の顔を見たら、自然とにっこり笑えたんだ。


「うん。玲も元気だった?」


少しホッとしたような、航太の顔。

そうだよね、航太だって…。

隣で梨花は、睨んでるし、ね。


「玲、綺麗だね。」


「ふふ、ありがとう。」


「航太も素敵だよ。」


背が高い航太は、やっぱりスーツが似合う。

航太の仕事帰りにデートする時は、並んで歩いてもおかしくないようにって、私も服装、頑張ってたなあ。

懐かしい、思い出だ。


―――――。


―――――。


その後の会話が、続かない。

そんな私たちに、佐藤君が間に入る。


「玲ちゃん、梨花ちゃん、じゃあ、また後で。」


梨花は、それはもう完璧な微笑みで二人を見送っていた。

< 649 / 769 >

この作品をシェア

pagetop