* another sky *

「…あの時。

あんな情熱的なキスしてさ。

あのせいで俺、忘れられなかったんだけど。

俺の玲じゃもう、ないんだよなあ。」


「はっ?」


一瞬で赤くなった私に、


「そう。玲はいつも真っ赤になって可愛かったのに。

いつの間に、あんな情熱的なキスが出来るようになったんだろうと思うと悔しいよ。」


と、目を細める。


「綺麗になったな、凄く。」


「ほんと? 嬉しいなっ。」


「俺たちが付き合ってた時の玲とは、全然、違うよ。」


―――――??


「今の玲の方が、幸せそうで綺麗だよ。」


「航太…。ありがとう…。」


ちょっと照れくさくって、俯く私に、


「彼が待ってるから、戻ろうか。

怒られるよな。」


と、心配そうに立ち上がった。


「怒らないよ。

翼はこんなことで、怒らないから。」


「……っ。完敗だなぁ。」


航太は大きな手のひらを私の頭に置き、


「幸せになれよ。」


と笑った。



私の、大好きだった、あの顔で。


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