* another sky *

それなりに、穏やかになっていただろう生活の中で、玲と麻友理さんが再会してから、急展開していくわけで。


ただ、――――。

そのことがあったから、玲は自分と向き合う事が出来た。

そして、俺は玲にもっと近付くことが出来たんだ。


これは、事実なんだし…。


少しずつ、ねじ曲がっていたものが元に戻されて行くけれど、人間の感情だけはもう元には戻れない。


梨花さんは未だに、玲に負い目を感じているし、麻友理さんは綾子さんの結婚式に出席しなかった。


そして、あいつは今も、玲のことを思っている。


玲は、どう思ってる?


普通にしてればいいよ、なんて言ったものの、目の前で玲が連れて行かれるのを見ると、やっぱり複雑、だ…。


「さっきね、上原さんが写真に応じてたでしょう?

玲ったらヤキモチ、焼いてたんですよ。

気付いてましたか?」


「握手とかは平気みたいですけど…。

腕を組まれたりするのが、毎回慣れないって言いますね。」


一応、当たり障りなく、答えてみる。


「玲がね、ヤキモチってありえないですよー。

自分の感情を表に出す子じゃなかったから。

会いたくても、我慢、我慢。

我儘言って、困らせない。

切ないくらい、一生懸命で。

でも、さっきの玲、見てたら私、安心しちゃいました。

上原さんにすごく大切にされて、幸せなんだろうなぁって。」

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