* another sky *

「あー、ほら、玲っ。

ゆっくりしたいのなら、ちゃんと着替えて。」


昨日、一睡もしていなかった私は、あっという間に酔いが回ってしまって。

飲めない翼と、ふらふらの私。

二人して、諏訪さんにタクシーで送ってもらったのだ。


「ふあああ。眠たいなあ。」


ソファで寛ぐ私に、翼の声が降り注ぐ。


「ほら、着替えておいでって。」


もう―――。

うるさいなあ。


拗ねた顔をして見上げると、相変わらずの優しい瞳で、私を見つめる翼がいる。

あ、ヤバい。

翼のこの顔、好きだ…。


「今日は抱っこ、出来ないんだから。

自分でベッドに行ってもらわないと。」


「……っ。」


お酒の力なのか、翼の甘さのせいなのか、わかんないけれど。

私の頬の熱は、目下上昇中。


「ちゃんとシャワー浴びて寝るから、大丈夫だもん。」


「あ、俺、ひとりでお風呂入れないや。

そうだ。玲と一緒に入って、洗ってもらわないと―――。」


――――!!


「さっきまで普通だったのに、どうしてお風呂だけ出来ないのっ。」


「ばれた?」


「もうっ!!」


瞬間湯沸かし器みたいに、さらに真っ赤になった私に、翼は可笑しそうに舌を出す。


「玲に身体洗ってもらうの、俺、好きなんだもん。」


あの…、翼…。

その、甘ったるい表情、…私、もちません。

今日はもう、これ以上からかわないで、下さい…。
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