* another sky *

「翼、これ、ガリガリしてかけてね。」


ざっとオリーブオイルを回しかけ、塩と胡椒を挽いてもらう。

そして、クリームチーズに苺を潰して混ぜ、はちみつを垂らす。

クラッカーは袋のまま。


「わ、うまそ。」


「適当でごめんね。クラッカーに乗せて食べて。」


こんな簡単なものでも喜んでくれるから、嬉しいんだよね。


「シャーベットもあったよ。」


「それ、後で一緒に食べよう。」


ソファを背もたれにして、二人で並んで乾杯をして。

翼はDVDをセットしに、テレビへ向かう。


「なあ、振り付け頼まれたんだけど。

俺、普通の学校生活、送ってないじゃん。

みんなこんな楽しく青春してたわけ?」


そう言って、DVDのジャケットを指さした。


「私もわかんないなあ。

男女交際って、私からは遠いところにあったし…。

引退するまで学校休むことも多かったし、ね。」


「玲もか、―――。

じゃあ、これで普通の青春を味わっとくか。」


くしゃくしゃっと私の髪の毛を撫でる翼。

肩をぎゅっと抱かれると、一気に距離が縮まった。


「私、最後まで見る自信ないよ?

寝ちゃいそうだもん。」


「おーけー。適当に流しとくから。」


そして私は始まって20分で、あっけなく撃沈したのだ。

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