* another sky *


朝の7時を過ぎた頃。


私は重たい扉をゆっくりと開けた。


刹那、凛とした冷たい空気が頬をかすめ、私は大きく息を吸い込んだ。


うん。

この、空気感、やっぱり好きだ――。


「さむーい。」


繋いでいた手を離し、私に抱きつく、小さな天使―――。


「寒いねえ。」


首を傾げると、拗ねた顔で私を見つめた。


「ママ、だっこして。」


眉間に皺を寄せると、私の足に絡みついてくる――。


もう、しょうがないな。

その上目づかい、翼にそっくりなんだから。

私は慶の頭をそっと撫でた。


「玲っ、慶っ。」


シャーっという氷を削る音とともに、リンクに響く、翼の声。

流れる空気を纏って、翼が目の前に現れると、慶はきらきらした瞳で駆けだして行く。


「パパっ!!」


走り寄る息子に手を差し出しながら、嬉しそうに待ち構える翼に私は、胸がいっぱいになる。

翼は、飛び込んでいく慶を軽々と抱き上げ、柔らかな視線を私に向けた。


「どうしたんだよ。」


「慶がどうしてもパパが見たいって言うから。

はい、これ。

ついでに、朝ごはんを持ってきました。」


私は持っていたお弁当の入ったトートバッグを差し出した。


「まじか。」


嬉しそうに笑い、大股で私に近付くと、頬に、ちゅっ、とキスをくれる。

< 720 / 769 >

この作品をシェア

pagetop