* another sky *
朝の7時を過ぎた頃。
私は重たい扉をゆっくりと開けた。
刹那、凛とした冷たい空気が頬をかすめ、私は大きく息を吸い込んだ。
うん。
この、空気感、やっぱり好きだ――。
「さむーい。」
繋いでいた手を離し、私に抱きつく、小さな天使―――。
「寒いねえ。」
首を傾げると、拗ねた顔で私を見つめた。
「ママ、だっこして。」
眉間に皺を寄せると、私の足に絡みついてくる――。
もう、しょうがないな。
その上目づかい、翼にそっくりなんだから。
私は慶の頭をそっと撫でた。
「玲っ、慶っ。」
シャーっという氷を削る音とともに、リンクに響く、翼の声。
流れる空気を纏って、翼が目の前に現れると、慶はきらきらした瞳で駆けだして行く。
「パパっ!!」
走り寄る息子に手を差し出しながら、嬉しそうに待ち構える翼に私は、胸がいっぱいになる。
翼は、飛び込んでいく慶を軽々と抱き上げ、柔らかな視線を私に向けた。
「どうしたんだよ。」
「慶がどうしてもパパが見たいって言うから。
はい、これ。
ついでに、朝ごはんを持ってきました。」
私は持っていたお弁当の入ったトートバッグを差し出した。
「まじか。」
嬉しそうに笑い、大股で私に近付くと、頬に、ちゅっ、とキスをくれる。