* another sky *
「どこ行ってんの?」
「それが神戸なんですよ」
「神戸っ―――??
いいなあ、この時期綺麗なんじゃないの?」
すとんと椅子に背中をつけると、桜木さんは心底羨ましそうな声を出した。
「いいですよねぇ」
クリスマスシーズンのこの時期。
神戸でデート、なんて。
テレビで特集だって組まれてるし、全国の女子の憧れのデートスポットなんじゃないの?
「羨ましいーっ」
年末年始に開催されるアイスショーに出演するため、今日から約1か月の間、翼は日本中をあちこち旅して移動する。
何度か戻っては来れるものの、平日ばかりで私の休みとは重ならない。
そしてクリスマスは勿論、―――。
新年も迎えて早々、2日からまた遠征に出かけてしまうんだもん。
冬は私にとって、寂しいぼっちの季節なのだ。
仕事柄、わかってはいるんだけど、やっぱりクリスマスは一緒にいたいなあ、なんて。
あれ、―――?
クリスマス、―――??
私、翼と一緒に過ごしたいんだ、なんて今さらながらにふと思う。