* another sky *
仕事を終えて、
一旦家に帰り急いで出張の用意をする。
三泊といえども、仕事は一日だけ。
それも向こうで誰かと会うわけでもなく、レンタカーでそれぞれの施設を回り、各所を写真に収めてくればいいだけのこと。
「何で吉野が行くねん。
俺がめっちゃ楽しみにしとったん、お前知ってるやろ?」
「……はい」
船舶が好きでラジコンボードを趣味とする諏訪さんは、何日も前から《神戸海洋博物館》に行くことを楽しみにしていて。
くうっと悔しさを噛みしめ、やさぐれた様子の諏訪さんに
「……すいません」
小さな声で謝ってはみたけれど。
「諏訪君はさ、私と一緒にいるより出張を選んじゃうわけ??」
「そうやないよ、そうやないけどな」
「まさか身重の妻を一人おいて、神戸になんか行かないよねえ」
「いや、仕事やがな」
「だから吉野が変わってくれるってよ? 吉野も成長したじゃない。周りを気遣えるようになったのね」
「吉野、お前……」
「何、どうしたの?
諏訪君、どうしても神戸に泊りで行かなきゃいけない用事でもあったわけ??」