* another sky *
* 玲のワスレンボ *
「……もしもし、―――」
迫る薄闇に気持ちを持っていかれそうになるのは、何故なんだろうな。
逢魔が時とはよくいったもんだ。
目の前に広がる紺碧の海に薄紫の空がどんどん飲み込まれて、海に溶けてしまったオレンジが、理由もなくもの悲しい気持ちを呼び起こす。
昼間の景色とはまた全然違うんだな。
遊覧船の明かり、離着陸する飛行機、そして闇に反して輝きを増すハーバーランドの景観。
ふと玲の顔が頭に過り、肩から力が抜けていく。
「ええ、ええ、―――」
通話口の向こう、―――。
桜木さんの声が楽しそうに踊ってる。
「あはははっ、上手くいったんですか」
「頑固だからさあ、翼の邪魔はできませんって断られるかと思ったー。」
「いろいろとすみませんでした」
「いいのよう、あの子放っておくとずっと会社にいるんだもん。
たまにはこういうのも悪くないわね。」
どうやら玲は、――――。
こっちに向かってるらしい。